有名な般若心経の一節である「色即是空」とは、肉体(=色)は仮想現実(=空)であると解釈できます。脳は身体の感覚器が受け取った情報を自然環境や人間社会にスム-スに適応できるように処理しています。
例えば、指で物に触れると、指先に物の触感が感じられます。これは当たり前のことではありません。触感を感じる情報処理は脳で行われるのだから、脳で触感を感じるはずなのです。しかしそうは感じません。その理由は、脳が指先で触感を感じたかのように情報処理をしているからです。他の感覚刺激も同様です。例えば、ドアをノックする音がドアで発生したように聞こえるのは、脳があなたにそのように錯覚させているからなのです。このように脳が作り出した仮想現実が、あなたがこの世界に生きている実感の正体なのです。
ロボット工学者の間ではこうした問題がまじめに議論されています。