自然の摂理と循環とはどういうことでしょうか?

自然の摂理と循環とは、「自然が、動物(捕食者)、植物(生産者)、菌類(分解者)が相互にバランスを保ち共存する摂理の元で、物質が循環再生産され、生物の持続的な生存と環境を実現している」ということです。菌類は種類が多く眼に見えないので理解が難しいものです。菌類を含めて、自然の循環を理解し、自然の循環に調和した暮らしを目指すことが、私たちの持続的生存を可能にします。

 進化の過程で一年性の被子植物が多く出現しました。一年草は、個体の生存期間を短くすることで、遺伝子の多様性を増やしながら、速く増殖することに成功しました。これらの植物は、種を放出した後には、枯れて、土に還ります。大量の植物遺体が地表を覆えば、種には光が照射されないので発芽できなくなります。

しかし土壌菌は光を使わずに大量の植物遺体を分解します。そのおかげで植物は発芽できるのです。細胞質の糖や核酸は細菌によって比較的容易に行われますが、細胞壁は高分子の多糖類でできているので、分解は容易ではありません。前回は、細胞壁の分解は糸状菌(カビ)、放線菌(抗生物質を分泌する細菌)、担子菌(キノコ)などの多様な菌類の協力によって行なわれることを示しました。根の周囲のムシゲルなどの粘着性多糖類や分解されて残った有機物の一部はアルミニウムと結合し腐植になります。腐植は土壌の団粒化を促進します。腐植もまた徐々に分解されていきます。

増殖した菌類の遺体も菌類によって糖やアミノ酸に分解されます。有機物や菌遺体はさらに細菌によって、植物が吸収しやすい無機態の栄養素に変換されます。植物は、細胞の骨格となる炭素を光合成で得ています。しかしタンパク質や核酸や浸透圧調整に必要な窒素・リン酸・カリ(NPK)の殆どを主に無機物質の形で根から吸収しなければなりません。結局、植物や菌類の遺体の分解によって、遺体に含まれるNPKの栄養素やMg、Ca、Feなどのミネラルが土壌に供給され、それらは植物によって再び吸収され、再利用されます。

植物は、微生物の多様性を高めることで、病原菌から身を守っています。様々な菌がバランスよく生息している土壌は、活性の高い土と呼ばれ、病原菌のみが繁殖し難い状態になっています。植物は根から糖を分泌させることで、根の周りの菌叢のバランスを整えているのです。単一菌叢になると病気や連作障害が生じると考えられます。

植物は、根から糖やペプチドを出して、細菌を集め、グロマリンを放出し、土壌を団粒化し、菌類が棲息しやすい環境つくりをします。多くの植物は、菌根菌と共生し、根より細い菌糸を使って、細部の水分やリンやミネラルをより広範囲の土壌から得ることができます。また土壌の団粒化により、植物は自分自身に必要な水と空気が得られます。

団粒構造を著しく失った土は、降雨時には余剰水の涵水機能が働かなくなるので、畑の表面が川のようになってしまいます。そのような土地は雨があがったらすぐに乾いて、ひび割れを起こし、土埃を巻き上げます。適切な空気と水分がないので、微生物が住めなくなると、有機物は十分に分解できずに蓄積し、地下水を汚染するなどの問題を引き起こしてしまいます。

つまり土壌の団粒化は環境を保全します。団粒化により、降水が素早く深部に浸透するので、栄養素やミネラルが表面流出し難くなります。雑草や雑菌も栄養素やミネラルを土壌に保持する役割を果たしているのです。土壌の安易な耕起は、雑草や雑菌を殺し、土地の乾燥と荒廃をもたらします。団粒化は土壌生物によるものです。土壌の化学性と物理性を向上させには、まず土壌の生物性を向上させなければならないことに私たちは気づき始めたのです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です