数学という学問

「数学という学問Ⅱ」志賀浩二、ちくま学芸文庫、1000円

志賀先生は一般向けに多くの優れた数学の入門書を書かれている。「数学という学問Ⅱ」では、複素数や複素関数が受け入れられていく過程を分かりやすく紹介している。

複素数は方程式の虚数解に含まれる形式的な数として登場する。やがて虚数iは複素平面上の90°回転の作用素として解釈される。フランス人のコ-シ-は複素平面上の複素関数の微分や積分を考えた。実関数では時間微分は速さ、積分は面積という意味を持つが、複素関数の微積分はどんな意味を持つか分からなかった。それでも当時の数学者は形式的に複素解析の世界を切り開いていき、はじめて抽象数学を生み出した。

複素関数f(z)が点zで微分可能であるとは、点zにどの方向から近づいても微分値が一致するものと定義された。その一致条件がコ-シ-・リ-マンの関係式だ。f(z)の実部と虚部がこの関係式を満たしていれば、f(z)は微分可能になる。f(z)が点zで微分可能であれば、f(z)は点zの近傍では均質的に広がっていることになる。f(z)が領域Dで微分可能であれば、f(z)の広域的な分布状況が均質であることを意味している。実微分は関数の局所的かつ動的な姿を表すが、複素微分は関数の大域的かつ静的な姿を表していると志賀さんは考えている。

2件のコメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。