クジラはどのように進化してきたのでしょうか?

近年クジラの進化史が解明されつつあります。プレ-トテクトニクスによる大陸移動は、海峡封鎖や造山運動を引き起こし、海流を変化させ、気候を寒冷化させてきました。寒冷化による海底栄養塩の湧昇は、プランクトンやオキアミの大発生を引き起こし、クジラの餌を豊富に供給したのです。クジラヒゲはオキアミを効率よく捕獲できるので、クジラが巨大化しました。

1か月前に名古屋大学の須藤斎(いつき)准教授が書かれた「海と陸をつなぐ進化論」(Blue Bucks)を参考にして、クジラとプランクトンの共進化の歴史を紹介しましょう。ちなみに須藤准教授は珪藻という植物プランクトンの専門家です。須藤氏は珪藻が大発生した3つのイベントと海洋生物の進化の関係を研究されています。

大昔の海水温度を推定する酸素同位体比

酸素には3 種類の同位体が存在ますが、海水の酸素は16O(軽い水)と少量の18O(重い水)で構成されています。海水が蒸発し、積雪によって氷床に取り込まれ易いのは軽い水なので、軽い水が氷床に取り込まれます。そのため、氷床が拡大する氷期の海水は相対的に重い水が多くなり、逆に間氷期の海水は軽い水が多くなります。海水中を漂う石灰質有孔虫は海水を使って石灰質の殻を作ります。この殻には水温が低いほど、重い海水が多いほど多くの18O が取り込まれるので、酸素同位体比18O/16O は水温が低い氷期に大きくなります。

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