チロシンからどのような抗酸化物質が合成されるのでしょうか?

チロシンYから合成される抗酸化物質の殆どはキノンです。例えばTPQ、LTQ、CTC、PQQ、インド-ルキノンがあります。キノンはベンゼン環の2つの炭素をカルボニル基(C=O)に置き換えた構造を含む化合物です。このキノンの酸素がNHやCH2などに置き換わったものをキノノイドと呼びます。キノンは基本的に酸化還元反応の補助因子で、オキシダ-ゼやハイドロゲナ-ゼにおいて電子伝達反応を可能にします。

トパキノン(TPQ)は銅アミン酸化酵素です。リシン・チロシルキノン(LTQ)はペプチド内のリシンを酸化します。システイン・チロシル・コファクタ-(CTC)は酸化酵素の活性発現に必要な因子です。

ピロロ・キノリンキノン(PQQ =Pyrroloquinoline quinone)は酸化還元反応に関与する電子伝達体です。1964年にJ.G. Haugeらにより、細菌のグルコース脱水素酵素に含まれるニコチンアミドとフラビンに次ぐ3番目の酸化還元補酵素として見出されました。PQQは必須アミノ酸であるリジンの分解に関わる酵素を助けています。PQQを含まない餌を与えたマウスは、成長が悪く、皮膚がもろくなり、繁殖能力が減少します。

ちなみに脂溶性ビタミンのビタミンKはキノイドの一つです。天然のものはビタミンK1(フィロキノン)とビタミンK2(メナキノン類)があります。ビタミンK1は植物の葉緑体で生産され、ビタミンK2は腸内細菌から生産されます。これらは血液凝固や丈夫な骨づくりに不可欠です。

このようにキノンは生物学的に重要な物質です。キノンは光合成の光化学系I・光化学系II などの電子伝達系において、電子受容体としての働きをしています。光化学系I には2対のフィロキノン、光化学系II には2対のプラストキノンが存在します。

キノンはタンパク質と反応して結合する性質があります。昆虫の外骨格が脱皮後に硬化するのは、キチン質の外骨格の基質に大量に埋め込まれたタンパク質にキノンが結合することで生じます。白内障は、水晶体のクリスタリンがアミノ酸から変異したキノンと結合することで生じると言われています。

インド-ルキノンは、真正メラニン(eumelanin)色素の前駆体です。真正メラニンにはインド-ルキノンの重合体が含まれています。メラニンはチロシンから作られます。このチロシンにチロシナーゼという酸化酵素が働き、ドーパになります。更にチロシナーゼはドーパをドーパキノンに変化させます。ドーパキノンは化学的反応性が高いので、酵素の力を借りる事なくドーパクロム、インドールキノンへと変化し、最終的には酸化重合して、黒褐色の真性メラニンになります。ドーパキノンとシステインが反応することで、システィニルドーパを経て亜メラニン(Pheomelanin)が合成されます。メラニンは水や全ての有機溶媒に不溶で安定です。 人間などの動物は、細胞核のDNAを損壊する太陽からの紫外線を毛や皮膚のメラニン色素で吸収しています。

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