NHK総合TVの視点・論点で、「社会保険国家から社会サ-ビス国家へ」と題して、日本社会事業大学の神野直彦教授がお話をしました。
私も、平成はまさに工業社会からサービス社会へ移行する時代であった、と思います。
私たちは工業社会の行き詰まりによるバブル崩壊と長期の経済停滞を経験しました。その中で労働市場が正規と非正規に二極化し、格差と貧困の原因となりました。少子高齢化が進み、家族の形態も大きく変化しました。インタ-ネットや人工知能などの新しいサ-ビス産業が発展し、技術的にサービス社会が到来しました。
工業社会では主に男性が働きに出ていましたが、サ-ビス社会では、女性の働く機会が増えてきました。その結果、これまで女性が担ってきた育児や高齢者ケアをする人が必要になってきたのです。
社会保障の国際比較デ-タを見ると、日本は、年金と医療においては他の先進国と同等の保証を実現していますが、福祉教育サ-ビスの保証は見劣りします。福祉教育サ-ビスとは、保育、子ども、老人に対するケアと職業訓練などの再教育のサ-ビスのことです。工業化社会から知識サ-ビス社会へ変化したのだから、再教育サ-ビスを充実させる必要があります。先進国は、サービス社会に合わせて、現金給付だけでなく、サ-ビス給付を保証しているのです。家族だけをケアしていた時代から、コミュニティのケアをする時代になるのでしょう。
平成の改革は、年金、医療、介護の社会保障制度を継続させるための取り組みでした。年金では、平成16年に給付水準を固定して、保険料を引き上げる制度から、保険料を固定して、給付水準を引き下げる制度に変更されました。医療では、自己負担の引き上げと後期高齢者医療制度が創設され、平成12年には介護保険制度が創設されました。
平成の社会保障は、年金保険と医療保険による現金給付型の社会保障でした。令和では、現金給付だけでなく、福祉教育サ-ビスを充実させた社会保障を行うのが課題です。それによって雇用を維持し、持続的な経済を実現できるでしょう。