社会はウイルス感染症をどの程度許容するべきでしょうか?

これから早急に答えを出していかなければならない難しい問題です。毎年日本では季節性のインフルエンザが流行し、多くの人が感染し、亡くなっています。しかし政府はインフルエンザの感染拡大防止のために外出自粛を要請することはありませんでした。その理由は、多くのインフルエンザの流行は自然現象であり、流行期間は集団免疫の獲得により3カ月程度で終了し、死亡者は老人が多く、社会に対する影響が限られているからです。
 新型コロナ肺炎の場合、政府は7割~8割の接触削減を実現する外出自粛を要請しました。その理由は、国民の生命と生活を守るためです。具体的には
1) 新型コロナ肺炎の致死率が高く、放置すれば多くの死者が発生する。
2) 獲得免疫の持続期間が短ければ、流行が慢性化する。
3) 医療体制が崩壊すると、他疾患の患者が死亡する。
4) 長期の外出禁止政策により失業者が増大し、生活が困窮し治安が悪化する。
などの可能性があり、国民の生命と生活に与える影響が大きいからです。特に糖尿病や高血圧症や心疾患や腎疾患を有する人が新型ウイルスに感染すると重篤化します。

今後このような新型ウイルス感染症が発生するたびに国民の生命と生活が打撃を受けることになるでしょう。この問題が困難なのは、生命を守れば、生活が守れないというジレンマがあるからです。私たちはウイルス感染の拡大を早期に検出分析し、どの程度行動制限をかけるか、どの程度生活補償をするかを迅速に判断できる透明な体制を整えなければなりません。医療介護、小売り、清掃、配達員などの社会基盤維持に不可欠な労働者の生活健康保障も重要です。健康弱者の保護、健康格差の是正にも取り組むべきでしょう。
地震や津波などの自然災害とウイルス感染の流行が重なったら、避難や復興のために人が集まることで感染が拡大してしまします。こうした緊急事態に備え、対処していくことも課題になります。例えば隔離病床に使用できるホテル設計や遠隔医療は重要です。これからの日本の成功は、防災需要で経済を活性化させる仕組みづくりにかかっています。

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