眼を持つ生物が出現したことで、色を見分ける生物や、体色や擬態で身を守る生物が生まれたのでしょう。『眼の誕生』の著者アンドリュー・パーカーはシドニーの博物館でウミホタルの研究をしていました。彼は動物化石に構造色を示唆する証拠を発見しました。構造色は、モルフォ蝶、タマムシ、孔雀の羽などにみられる美しい干渉色のことです。モルフォ蝶は櫛葉構造、タマムシは多層薄膜干渉、孔雀は回折干渉で発色します。色素は分解してしまいますが、構造色の構造は化石に痕跡を残します。
ウィワクシア(Wiwaxia)は、約5億年前の海に生息していたバージェス動物群に属する全長約2.5- 5cmの楕円形をした動物です。背面は多数の鱗状の骨片で全面が覆われています。体の背面に中央を挟んで左右1列に生える10本前後の鋭い棘(とげ)があり、これで身を守っていたと考えられます。また背中の鱗の表面には幅数百nmの周期的な溝があり、構造色を示していたと考えられています。カンブリア紀の浅い海の中には極彩色の生物が数多くいたのかもしれません。